蔵造りの町並みが人気を呼んでいる中町通りにあり、
アクセスのしやすいはかり資料館。
親子や海外の方がよく訪れるそうです。
「はかる」という動作を難しいと思う人はいるでしょうか。
例えば、長さ、重さ、お金などを
「はかるのが難しい!」
などと思う人はいないでしょう。
私たちは、はかるための道具を持っていて、
全て数字で示してくれるので、
誰の目から見ても一目瞭然です。
では、数字を用いないではかるとしたらどうでしょう?
昔でも、確かにはかるための道具はありました。
しかし、数字ではなく自分の身体を頼りにはかっていたのです。
数字ではかることができる道具が揃っている現在、
自分の身体を使ってはかるという体験は、実に貴重なのではないでしょうか。
はかり資料館で用意されている体験コーナーは、7項目ほど。
内容としては小さい子から高齢者まで、誰でも挑戦できるような内容で、
時間も20分程度とお手軽。
しかし、自分の身体を使ってはかるのは、
簡単に見えてとても難しいことなのです。
例えば、1メートルの長さを紐を使って計ってみます。
大体これぐらいだと思ったところに印を付けて、
実際にメジャーで確認します。
これでぴったり1メートルに当てるのが難しいということに、
すぐ気づくのではないでしょうか。
1メートルを割り出す方法をいろいろ考えてはみるものの、
ぴたりと当てられるという人はなかなかいないそう。
袋の重さが何kgあるかを予想するだけなのですが、
これもなかなかぴたりとは当てられません。
袋の重さを計るついでに写真右側にある分銅と比べても、袋と分銅では密度が異なります。
数字の上では同じ重さであっても、分銅のほうが重く感じたりするのです。
それだけ、感覚ではかるというのはやはり難しいことなのです。
友達や家族でぜひ挑戦してほしい体験です。
はかることは、一種の職人技のようなものだったのかもしれません。
手で持っただけで重さを一発で当ててしまうというのも、
珍しいことではなかったようです。
現代に生きる私達の感覚が鈍っているだけで、
本来人間は、それだけの身体感覚を持っているのかも?
身体を使って測ることは難しいものの、
現代に生きる私達が、物事を測ることができるのは、
メートルやグラム、キロや摂氏などといった
共通の単位と数字を使っているためではないでしょうか。
写真下のはかりを使えば、数字ですぐにわかるものもあります。
しかし、上にあるように天秤で重さを測るとなると、
同じ重さに揃えるにはやはり難しいのではないでしょうか。
実は昔、はかりの基準となるものがバラバラであるという時代がありました。
1メートルという長さが、
地方によっては60センチだったり、
あるいは180センチだったりするようなものです。
これに困ったのが、実は国家。
一定の税率を定めても地方によって基準が違うために、
実際の収入が異なってくるからです。
そこで為政者は、度量衡の統一を図る必要がありました。
実例として、豊臣秀吉の太閤検地を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
はかり資料館では、現在に至るまでの度量衡の歴史も知ることができます。
はかり資料館の奥には、日本庭園風の中庭の他、
土蔵と、蔵座敷があります。
土蔵の中は、製糸業関連の資料が展示されていて、
こちらももちろん閲覧可能。
奥の蔵座敷は擬洋風建築。
この蔵座敷も、重要文化財である旧開智学校を建てた立石清重により
作られたものです。
1階は和風、2階は洋風で作られていて、
上と下の階でガラッと雰囲気を変える点が
大変面白い建物です。
1階はこのような純和風の作りなのですが…。
2階は間取りの広い洋間が広がっています。
再び1階に戻って「おやっ?」と思うことがありました。
1箇所だけ、小さな畳が敷かれています。
これは一体?
随所に匠の工夫が凝らされていることがよくわかりました。
中庭の風景もはかり資料館の見どころの一つ。
また、館内では、絵でありながら立体感のある押絵雛が展示されています。
おみやげコーナーには、松本ならではの「松本手まり」などもあります。
はかり資料館の周辺は、中町通りだけでなく縄手通りや商店街もあるなど、
気軽に寄るがことができる環境です。
資料館も観るのに時間はさほどかからないので、
立ち寄りやすいものです。
中町通りの散策をするなら、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
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ちなみに松本駅から松本市はかり資料館へはタウンスニーカー(東コース)で約4分で行くこともできます。
▼タウンスニーカーの記事はこちら
※取材日:2017年3月20日