美術品と工芸品の違いとは一体何でしょう?
有名であるものだけが美しいのではなく、
無名であっても美しいものはあります。
台所の片隅で埋もれながらも、
優れた機能美をもっていて、使いやすいものだってあるんです。
この「使うこと」に工芸品にしかない魅力が隠されているのかもしれません。
松本民芸館はどのような場所なのでしょうか。
松本民芸館を創設したのは、中町で工芸店を営んでいた丸山太郎さん。
柳宗悦の民芸運動に感銘を受けたことがきっかけで、昭和37年に開館。
収集だけでなく、自身でも作品を作られていて、
昭和58年に松本市に寄贈されました。
日本民藝館の直系である松本民芸館は、
常時500点の資料を展示し、
そのうち150~200点は企画展で館の2階に展示されています。
企画展は年4回、約3ヶ月おきに内容が変わります。
館内はエレベーターがないため、車椅子の人でも楽しめるよう、
1階に常設展を設けています。
通路が広々としていて通りやすくなっています。
一般の美術館などと違い、松本民芸館では、
一つ一つの作品の説明は最小限にとどめています。
確かに日常品は、誰が作ったとか、どこで作られたかといったことは、
あまり意識することがないように思えます。
そういった情報によって価値を判断するのではなく、
先入観なしに作品を見てほしいのだと感じました。
館長のおっしゃる通り、展示品と館内が一体となっていて、
場に馴染んでいます。
2階にあがったところで休憩室らしき部屋が。
ここの窓から見える景色とは…。
窓の下に取り付けられているパノラマ写真。
どんな山が見えるのか、名前が書かれています。
晴れ渡る日であれば、アルプスを見渡すことができます。
この日は残念ながら雲がかかっていました。
松本民芸館は、市街地の中心からある程度離れた場所にあります。
雑踏の少ない自然環境に近い場所を選んだからです。
歩きながら、街の空気も感じてほしい。
場所にこだわった理由は、そのような願いがこめられているからです。
2階の展示も大変充実しています。
2階渡り廊下の風景。
こういったところも「おっ!」と思わず足を止めたくなります。
1階へ通じる階段の途中で、こちらも思わずパシャっと撮影してみたくなりました。
先程の2階の渡り廊下を下から見上げてみても趣があります。
こちらが写真でよく紹介される松本民芸館の風景です。
奥の座敷は上がることもできるそう。
展示品は、全て日本のものというわけではなく、
海外のものもあります。
こちらは中東の洋服入れです。
道具屋との付き合いもあって、
こういった品を入手できたのだと教えていただきました。
場の空気を大切にしているのは、
何も館の中だけに限ったことではありません。
外観も四季に応じて、全く違う顔が見えてきます。
この日はまだまだ冬景色といったところですが、
建物を見通すことができました。
暖かくなったら別の風景が眼前に広がっているのでしょう。
松本民芸館ではおみやげも扱っています。
目玉商品はやはりみすず細工。
また、5月に行われるクラフトフェアに合わせて、
松本民芸館でも販売を行ないます。
臨時でバスの直行便が出るようになるので、クラフトフェアに行くときは、
ぜひ松本民芸館にも足を運んでみてはいかがでしょうか。
※取材日:2017年3月22日