「時計とは、生き物です」
動かなくなったものではなく、今もなお時を刻んでいる生きた時計。
館内の時計の点検に1時間かかっていると、
時計博物館の館長に教えていただきました。
松本城の南側にある千歳橋から見える時計博物館。
建物のシンボルである日本で最大の振り子時計が出迎えてくれます。
全長11メートルにもなる時計を下から見上げると、
いかに大きいことか。
時計博物館の1階と2階が常設展。
ホールのような1階では古代から使われていた時計の歴史を見ることができます。
時計の始まりは、太陽を利用した日時計でした。
やがて、蝋燭を使った火時計へ。
そして、砂時計が作られました。
一見同じに見える砂時計も、使われている砂の材質は異なります。
初期の頃のものでは粒の粒子が荒く、
ときおり粒がくっついて詰まってしまうといったハプニングもあるそう。
砂時計は時計というより、現代のストップウォッチのような使われ方をしていました。
1階で注目したいのは、金が使われているこの時計。
元はフランスの王様の所持品であったという時計です。
金でできた王様の所持品というステータスに目を奪われがちですが、
この時計を芸術作品として楽しみたいポイントは影。
影までデザインしてしまうという凝った発想は、
時計の発祥地であるヨーロッパならではといったところでしょうか。
時計博物館は、ヨーロッパから訪れてくる旅行客が多いのだそう。
2階へ上がるとまず和時計のコーナーがあり、
奥が西洋時計のコーナーになっています。
まず大型時計のコーナーに案内してもらいました。
こちらは200年前のグランドファーザー時計です。
と、観光に訪れる方へのメッセージをいただきました。
時間になると「ボォーン…ボォーン…」という低い音が響き渡ります。
15分刻みや30分刻みでも音が鳴る時計はありますが、
やはり音が何度も鳴るタイミングに来たいものです。
開館は午前9時からのため、午前10時・11時・12時の5~10分ぐらい前に
訪れれば、時計の音色を堪能できるでしょう。
また、時計が一斉に鳴り出さないよう、
館内は時計ごとに、時間を若干あえてずらしていると思われます。
こちらは大型時計。
先程のグランドファーザー時計との違いはというと?
それでも身長ぐらいのサイズは十分にあります。
写真左側の時計では、学校のチャイムでよく流れる「キンコンカンコーン」という音が。
更に奥の部屋には壁掛け時計が。
日本ではハト時計に対して外国ではカッコウ時計と呼ばれます。
なぜこのような名前の違いがあるのでしょう?
それは、日本ではカッコウを閑古鳥と書くことにありました。
「閑古鳥」とはカッコウの別名。
これには「商売がはやらない」といった縁起の悪い意味合いも持ち合わせています。
それを嫌って日本ではハト時計に名称を変えたのだと館長さんに教えていただきました。
壁掛け時計が展示されているその反対側は、
意匠を凝らした時計の数々が。
見た目にも面白い時計が多すぎて、
残念ながらとても全部は紹介しきれません。
中でも特に目を引いたのはこちら「振り子飛球置き時計」という
大正時代の日本の時計です。
振り子というとブランブランと左右に揺れ動くだけのイメージですが、
両側のポールに巻き付くように動く振り子の動きは非常にすばやくて
なんともアクロバティック。
動きを観ているだけでなんだか楽しくなってきます。
ここまで見てきたものは、私達がよく知る時計で思い浮かべるイメージと
大方一致しているものだと思いますが…。
そんなイメージから考えてみると、
インパクト抜群の和時計の数々。
2階へ上がってまず出迎えてくれるのが、日本の和時計のコーナーです。
時計というより何らかの仕掛けが飛び出してくるのでは…?
とも思えるほど独特のデザインで、
どのようなカラクリで動いているのか、興味は尽きません。
昔の日本では、時間や方角を干支で表していました。
現在でも使われる「午前」「午後」といった表現は、
「午の刻(うまのこく)」が由来となっています。
和時計を用いることは今はほとんどないかもしれませんが、
それでも文化は受け継がれているのだと感じました。
1階入り口にはおみやげコーナーもあります。
お気に入りの時計を探してみてはいかがでしょうか。
時計とは時間を知るために作られた道具です。
時間を管理するためのものでありながら、
ここにいると時間を忘れてしまいそうな心地がします。
デジタルが普及している現在、時間という情報さえ正確に伝わっていれば
それでいいように思うことはないでしょうか。
博物館に展示された時計は、正確性という情報ではデジタルには及びません。
しかし、時を情報として扱うことよりも、
楽しむために作られているような気さえします。
実際に動いている様子を、
その目で確かめてみてはいかがでしょうか。
※取材日:2017年3月20日