とにもかくにも、有り余るエネルギーを何事にも全力で発揮していたのでは…?
そんな風にさえ思えるのが、昔の学生の生活の様子を展示している
旧制松本高等学校記念館です。
学生たちは一体、どのような生活を過ごしていたのでしょうか?
現代とはどのようなところが違うのでしょうか?
旧制高等学校に通っていた学生は15、6歳~20歳の男子で、人口比では日本人の1%程度。
その生活は、今で言う高校というよりむしろ大学に近い雰囲気を持っていました。
しかし、当時のエリート学生はどうやら、ただただ勉強に明け暮れていた…
というわけではなさそうです。
かと言って、もちろん遊び呆けてなどいないことは、
当時の彼らの読書量から容易に想像することができます。
背の高さまで積み上げられた本が、それを物語っています。
上級生から「背丈ほどの本を読め」と教わるその本の内容とは、
なんと文学や哲学、ドイツ語の原書など。
なんとも知的な会話が繰り広げられていたのかもしれません。
勉強に、部活動に、寮での生活なども含め、
今ある学生生活を全力で生き抜いたのではないかと思われます。
展示品やパネルを観てると、
当時の熱気がなんだかこちらにまで伝わってくるような気さえします。
そんなバイタリティ溢れる彼らの行動力は、なんと校章についても騒動を引き起こします。
デザインが変わらなかったことから、どうやら沈静化はしたのでしょう。
しかしながら、当時の学生がいかに行動力や気力に溢れていたかを
物語るエピソードなのではないでしょうか。
旧制高等学校は、校舎の取り壊しにより現存するものは決して多くはありません。
松本高等学校も役目を終えたことで、取り壊すことになったのです。
しかし、卒業生たちの保存運動が地元住民に拡大し、
松本高等学校は、当時の建物の一部を保存することになりました。
学校本館と講堂、そして現在の公園の名前にもなっている
あがたの森の3ヶ所だけは、当時の姿を今に伝えています。
現在はその大半が、あがたの森公園として整備されていますが、
元々は全て旧制松本高等学校の敷地でした。
今よりもはるかに学校の数が少なかった時代です。
数が少ない分、一つ一つの学校が今よりも
はるかに大きかったのかもしれません。
旧制松本高等学校記念館では、館内が4つのエリアに分かれています。
2階は、全国の旧制高等学校を紹介するエリアと松本高等学校を紹介するエリア。
3階は、映像シアターや、休憩スペースのほか、
当時の寮生活における落書きを目にすることができます。
しかし、落書きとはいえ書かれているものは漢詩など。
消すのがもったいないとさえ感じるのではないでしょうか。
こちらは思誠寮という寮の学生の部屋を復元したものです。
落書きがなんと壁一面…というよりも―
―部屋中びっしりと書き込まれたこの落書きは、
旧制高等学校の卒業生の方たちによって、
当時の様子を実際に再現していただいたものです。
卒業生の話では、もっと「汚した」ほうが再現度が高いそうなので、
実際は隙間など微塵もないくらいに落書きが書かれていたのかもしれません。
落書きの中には、作家であった今は亡き北杜夫さんの落書きも残されています。
他にも昔を懐かしんで訪れる方や、バスツアーで訪れるという方も。
当時の学生は思誠寮で暮らしていました。
そして、学生たちが主体となって自治を行っていたのです。
このエピソードは、学生の自治がいかに強力であったかを
物語っているのではないでしょうか。
しかし、先生だって学生に負けてはいません。
学生たちと一緒に青春を謳歌する若き名物先生もいました。
先生愛用の槍、円盤、砲丸が展示されていて、
これは実際に触ることができるようになっています。
砲丸を持ってみたところ、5kgはある印象でした。
松本高等学校の教授でありながら、
陸上競技部の顧問ではなく部長をしていたという点がビックリです!
また、旧制高等学校を卒業している著名人は大勢います。
学校の教科書で、名前を聞いたことがある人物がちらほらと…。
名前しか知らなかった著名人のイメージと、
現実の写真とのギャップに思わず驚いてしまうケースも。
こちらの記念館では、当時の学生たちが着ていたバンカラ服を着て、
記念撮影することができます。
それを踏まえると、桜の咲く頃に合わせて訪れてみたいものですね。
おみやげの中でも特に人気が高いのが、
校章タオル(600円)とバンカラ手ぬぐい(800円)です。
エリート学生のエネルギッシュな力を分けてもらえるかも?
いかがでしたか。
学生の生き生きとした様が、本当にこちらまで伝わってくるかのようでした。
「あ、学生ってこんなに頑張っていたんだな。これは自分も頑張ろうかな」
と元気が湧いてきます。
最後に、観光者の方に向けてメッセージをいただきました。
松本市旧制高等学校記念館には
松本駅から東に伸びる「駅前大通り」を徒歩約25分。
タウンスニーカー(東コース)で約10分で行くこともできます。
▼タウンスニーカーの記事はこちら
※取材日:2017年3月23日